「一時間もえつこを待たせたことも、発作的にリストカットしたくなって、それを抑えてたからで」 草野の細い手首には何本も何本も切った線があり、昨日切ったような真新しいものもあった。 その日から、意識して草野を見ているとたしかに発作的にリストカットをしたがっている様子だった。 えつこは止めなかった。 むしろリストカットして血を流し、それを見てようやく落ち着きを取り戻す草野が、一番草野らしいとも思えたからだ。 一日に数回、発作的にリストカットする男とえつこは暮らすようになる。