駆琉の手が僅かに手を握り返す。




「…え…。駆琉…?」




「………ち、づ…」




すごく小さな声だった。



私の距離でやっと聞こえるくらい。




「ねぇ、駆琉…泰生君、駆琉がっ。」




「どうした?」




「ちづ……」




嬉しいはずなのに、ただ呆然とすることしか出来なかった。



弱々しく握り返す手と、薄くあいた目を見ていることしか出来なかった。




「駆琉、目覚ました…」




「駆琉っ!?駆琉っ!」




私の言葉を聞いて、由佳さんが駆琉の名前を何度も呼ぶ。




「俺、先生呼んでくるわ。」




泰生君が慌てて病室を出た。