左手から伝わる彼の体温は暖かくて、どういうわけか懐かしい感じがした。



それでもやっぱり恥ずかしくて何も話せずにいると、あっという間に家に着いた。




「ほらね?」




満足気に私の方を見る。



けど私からしたら




「ストーカー。」




としか思えない。




「だからちげーって!笑」




「だったらなんで。」




「絶対言わねー。ミステリアスな男って“惹かれ”ない?」




「“引かれる”んじゃない?」




冗談っぽく言ってみると、




なんでそう言うこというかなー




って笑って、繋いでいた手をほどいた。



離された左手が、なんとなく寂しくて、目線を落とす。




「もー!笑。そんな顔すんなよー!

……。」




「…え?」




「っえ!?俺、今なんか言った!?」




彼はすごく驚いた様子で、口を手で隠した。



私は大きく首を横にふった。



嘘だ。



確実ではないけど聞こえた。



もし、もし私の聞き間違えでなければ





『帰りたくなくなるんですけど。』