「はい、そうですが・・。あなたは? 」

「私はこういうものです」

男性が差し出したものは警察手帳だった。

「警察の方が何か? 」

研究所には警察は手出しできないことになっている。

私は先生からそう聞かされていた。

「いえ、ちょっと校内にチカンが出たらしくって」

なるほど、そういうことか。

仕事熱心な人だ。

「ああっ、そうなんですね。でも、ここから向こうには女性は私しかいないですし、研究所しかありませんから大丈夫ですよ」

私は振り向いて研究所の方を見ながら説明してあげた。

警察の人は、私のそばまで近づいてくる。

ふいに首に熱いものが押し当てられた。

そしてそれは私の首にめり込んでくる。

ぐっ。

声が出ない。

地面が揺れて、私は倒れる。

シューッ。

私の首から何かが勢いよく噴出している。

それと同時に意識が遠のいていくのが分かった。

寒い・・。

お父さん、お母さん寒いよ・・。

「恨むなら、望楽土を恨むんですね」

私が最後に聞いた言葉だった・・。


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第十三話へ続く
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