すわった状態で呆然としていると、少しずつ煙がおさまってきた。

向こう側に誰かが立っている。

仙崎梨花(せんざきりか)だ。

彼女は頭上を確認すると、ゆっくりと僕のほうへ近づいてきた。

「大丈夫か? 」

仙崎はそう言って手を伸ばしてきた。

「まさに間一髪ってとこだな」

確かに仙崎の言うとおりだ、あの下敷きになっていたら、もしかすると死んでたかもしれない。

僕はその手につかまり立ち上がる。

「あ、ありがとう」

僕はそれだけ言うのが精一杯だった。

「いい蹴りだったろ」

そう言って仙崎は落ちてきた鉄骨のところに行って何か調べだした。

その中には太いワイヤーのようなものがあった。

仙崎はそれを引き抜こうとするが、さすがに重くて無理なようだ。

あきらめて、ワイヤーの端を探し始める。

「なるほどな」

仙崎には何かが分かったようだ。

「何だよ。何がなるほどなんだよ? 」

僕は気になった。

ふんっ。

仙崎が首を振ってワイヤーの先を指し示す。

ワイヤーの先は焦げたように真っ黒になっていた。

「これがどうしたの? 」

「多分、セムテックスだな」

「セム・・? 」

「プラスチック爆弾だよ。ほら先っぽにおってみな」

僕はそう言われてワイヤーをにおってみた。

鉄が焦げた臭いに混じって、かすかに甘い臭いがする。

「甘いマジパンみたいな臭いがするだろ。それがセムテックスの特徴だよ。プラスチック爆弾でテロとかでも使われてんだ。少ない量でも強力で、こんなワイヤーならチョンだな」

「えっ、それってどういうこと? 」

僕は混乱していた。

上から物が落ちてきて、その中のワイヤーが爆弾で切断されている。