その時不意に後ろから肩をトントンと叩かれた。

振り返ってみると長いストレートヘアの女の子が席に座っていた。

目もとがパッチリで可愛いと感じたがその顔に心当たりはなかった。

きょとんとしているとその女の子は嬉しそうに話を進めた。
「もしかして、中学の時テニスしてなかった?」

!!
驚いた。
確かに私は中学の時テニスをしていた。
お世辞にも上手いとは言えなかったし、試合に出たのだって数回だ。

「え?!あ、してた!してたよ!!」
慌てて返事をする。

するとその子は嬉しそうに言った。
「私の事覚えてない??ほら!試合で!」

試合に出たのなんて数えるほどしかなかった。
急いでその数回の試合を思い出した。
自慢じゃないが私は物覚えが悪い。
特に人の名前に関してだが……

「……っあ!!もしかして斉藤さん!?」
私が唯一背中のゼッケンを覚えていた選手だった。

「そうそう!!斉藤 志帆(さいとう しほ)って言いまーす!志帆って呼んでね!」
女の子はそう言って明るく笑った。

どうやらフレンドリーな性格のようだ。

正直たった1回の試合で名前を覚えててくれたことに驚きと嬉しさを感じた。