わたしは、対人関係を築く能力が通常より低いらしい。極度の人見知りと警戒心が他人との距離を広げてしまい、生い立ちのせいか何処か冷めた感性をしていた。
わたしは良識で常識的な善人でありたかった。
世間から異常と審判され、周りから恐怖と侮蔑と憎悪の対象として見られる、神室に生まれた為に、わたしは神室に染まるのを良しとしない。
愛していない人と結婚して、愛していない子を持って…。
その子供が、おかしくなるなんてことにはなりたくなかった。わたしにだってプライドはある。
非常識な両親を見てきたから、わたしは常識的になろうとした。
わたしにとって両親とは、反面教師というものだった。
「透華〜、お昼食べよっか。」
「はい。今日は亜夜ちゃん、何を召し上がりますか?」
いつものように、わたしと亜夜ちゃんは食堂へ向かう。お昼休みはいつも食堂でご飯を済ませて、教室でお喋りをして過ごしている。
亜夜ちゃんの家も複雑な家庭で、わたし達はそんなところも似通っていた。
「んー、日替わりランチにしようかな。透華は?」
「オムライスにします。…そういえば、亜夜ちゃんのそのグロス…。」
他愛のない会話をしながら食堂へ行けば、いつもより多い生徒が集まっていた。わたしと亜夜ちゃんは、お互いに顔を見合わせる。
今日はあの日か……。
困ったように笑うわたしとは対象的に、亜夜ちゃんはあからさまに嫌そうな顔になる。人混みの中を抜けながら、何とか日替わりランチとオムライスを購入して空いていた席につく。
「……彼奴らがいるとほんっと迷惑。女子達が五月蝿いったらないわ。」
ギロリと亜夜ちゃんが睨む先には、この学校でも目立つグループ。確か、金融業で名を馳せる家の息子がそのトップとかで、彼らは好き勝手やっている。
見ている分には楽しいけど、こういう時には迷惑だ。