見た目の年にしては少し低めの声で問う。涼鈴は少し面食らったようにして、ええ、と答える。
「お嬢さんは、患者さん?」
だとしたらこんな大荷物を持たせたままではいけない。穹に目配せして、菜籠を渡した。
「荷物、お持ちしますよ」
涼鈴が手を差し出すと、少女はあ、え、と戸惑う素振りで坂の上の方と三人との間で切れ長の目をきょろきょろさせた。
「えっ、と、違うんです。茶穎の三師に、師事したいということで、参りました」
「え、ということはは医術師見習い?」
すっげぇ、と凌が素直に感嘆している。
少女が恥ずかしそうに微笑んで、はい、と返した。涼鈴も、そうだったの、と納得する。
「じゃあ、案内した方が良さそうね」
「はい、お願い致します」
結構な勢いで頭を下げたものだから、少女は前のめりに地面と衝突しそうになった。
「おっと、やっぱり、荷物持つわ」
今度は涼鈴だけでなく、穹までもが籠をおいて手を差し伸べたので、少女はまたしてもはにかんだ様子で辞退しようとしたが、涼鈴が強引に後ろを向かせてさっさと荷縄をおろさせてしまった。
「鈴姐追い剥ぎになれるぜ」
「失礼ながきんちょね」
ふたりの応酬のあいだにも、少女が申し訳なさそうにしていると、涼鈴はいーのいーの、とてをひらひらさせた。
「ずっと歩いてきて疲れたでしょう?すぐそこだから、もう少し頑張って下さいな」
よろよろしていた自覚はあったらしく、私力持ちだから、と無い胸を張る涼鈴に折れて少女は荷物を預けた。
「じゃあ、穹も、いくよ・・・ちょっと、凌、何でついてきてるのよ」
涼鈴が指摘すると、凌はそっぽを向いてべーっ、と舌を出した。はぁ、とため息が漏れる。
「見えてるわよ、あんぽんたん」
「おれはあんぽんたんじゃないって!」
「兎に角、青菜採り終わるまでは帰ってきちゃダメよ。あ、でもちゃんと水は飲むのよ!干からびてお馬鹿になるわよ!」
馬鹿でもないって、と院に帰っていく涼鈴に叫びながら、凌は道端の小石をちぇ、と蹴った。