来て早々、ここ数日の無茶が祟り熱射病で倒れた慎彰は、落ち着いてから案内された誰もいない相部屋で、布団の上に転がっているしかなかった。
(ここのひとたちに、まともに挨拶できなかったな・・・)
故郷から茶穎までは、二十日以上の道のりだったので、少しくらい体調を崩すのは予想の範疇だったが、着いてすぐに寝込んでいるのでは、どうにも先が心配である。
ぼぉっとする頭でここでの生活を案じながら、慎彰はそっと瞼を閉じた。
陽が南中しているだろう時刻だが、この部屋は樹木の陰になっているせいか涼しく、葉擦れの音も思いの外心を穏やかにする。とりあえず、この疲れた身体を癒すことを最優先に考えよう。
薄い肌掛けの柔らかい感触は、慎彰をいとも簡単に、深い眠りの底へと導いた。
*
夕刻に穹が様子を見に行くと、慎彰は静かな寝息をたてて深く寝入っていた。ここは穹ともう一人、凌の部屋でもあるので、慎彰の布団は一番奥の隅っこに敷かれている。修紅たちは、新たな仲間が増えることを事前に知らせてはいなかったため、いつの間にか文机が三つに増えていたのは彼が来るからだったのかと、穹は正に今、納得した。
夕食の時間になり、慎彰が起きていれば連れて来るよう言われていたが、見たところちょっとやそっとでは目を覚ましそうにない。穹は、濡れ布巾だけ取り替え、あとはそっとしておくことにした。無理やり起こしても、今すぐあの騒々しい部屋で食事をするのは、きっときついだろう。
新しい手拭いを絞っていると、布団がもぞもぞと動き、穹はちらりとそちらを見た。ただ寝返りをうっただけかとおもったので、穹は、落ちた手拭いを拾う手が伸びてきたことに驚く。
慎彰は、喉で小さく呻いてから、穹の方を見上げた。
「あ・・・ご、ごめん。起こして」
慎彰は起き上がって、首をぷるぷると振った。 穹が塩と砂糖を溶いた水を渡してやると、掠れた声で礼を言う。
「寝すぎなくらいかもしれない」
(ここのひとたちに、まともに挨拶できなかったな・・・)
故郷から茶穎までは、二十日以上の道のりだったので、少しくらい体調を崩すのは予想の範疇だったが、着いてすぐに寝込んでいるのでは、どうにも先が心配である。
ぼぉっとする頭でここでの生活を案じながら、慎彰はそっと瞼を閉じた。
陽が南中しているだろう時刻だが、この部屋は樹木の陰になっているせいか涼しく、葉擦れの音も思いの外心を穏やかにする。とりあえず、この疲れた身体を癒すことを最優先に考えよう。
薄い肌掛けの柔らかい感触は、慎彰をいとも簡単に、深い眠りの底へと導いた。
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夕刻に穹が様子を見に行くと、慎彰は静かな寝息をたてて深く寝入っていた。ここは穹ともう一人、凌の部屋でもあるので、慎彰の布団は一番奥の隅っこに敷かれている。修紅たちは、新たな仲間が増えることを事前に知らせてはいなかったため、いつの間にか文机が三つに増えていたのは彼が来るからだったのかと、穹は正に今、納得した。
夕食の時間になり、慎彰が起きていれば連れて来るよう言われていたが、見たところちょっとやそっとでは目を覚ましそうにない。穹は、濡れ布巾だけ取り替え、あとはそっとしておくことにした。無理やり起こしても、今すぐあの騒々しい部屋で食事をするのは、きっときついだろう。
新しい手拭いを絞っていると、布団がもぞもぞと動き、穹はちらりとそちらを見た。ただ寝返りをうっただけかとおもったので、穹は、落ちた手拭いを拾う手が伸びてきたことに驚く。
慎彰は、喉で小さく呻いてから、穹の方を見上げた。
「あ・・・ご、ごめん。起こして」
慎彰は起き上がって、首をぷるぷると振った。 穹が塩と砂糖を溶いた水を渡してやると、掠れた声で礼を言う。
「寝すぎなくらいかもしれない」
