ちらっと顔をあげると、安堂くんが真剣な瞳で、真っ直ぐに私の目を見据えていた。
「俺さ、確かに先輩の言うとおり、中3になるまで荒れてたんだ。
でも今はそういうことしてない。
ひなちゃんにだけは知っててほしくて」
「安堂くん……」
……最初から決まってる。
答えはただひとつ。
「……私は、安堂くんを信じるよ」
「ひなちゃん……」
〝そういうこと〟っていうのは、多分先輩が言ってた女遊びのこと。
安堂くんには、きっと私には踏み入れられない過去がある。
それを知らないっていうのは、さみしいけれど、私は今の安堂くんを知っているんだ。
今の安堂くんは、〝軽い男〟なんかじゃないって、そう信じられるもの。
それに───
『ひなちゃんにだけは知っててほしくて』
その言葉を、私だけ特別って感じちゃうのは、ちょっと自惚れてるかな……。