「あと、」
そう呟いて、キッと鋭い眼光を先輩に向ける安堂くん。
「この子に手ェ出したら、許さねぇから」
ドキンッ───
そんな状況じゃないことは分かってるのに
どうしてだろう……。
安堂くんにドキドキしてる、私……。
「わ、分かったわよ…っ!」
先輩はそう叫び残し、走り去ってしまった。
先輩の姿が見えなくなると、安堂くんが振り返って、まだ立てないでいる私の前にしゃがみ込んだ。
「泣かないで? ひなちゃん。
もう大丈夫だから」
「え……?」
言われて初めて気がついた。
いつの間にか、涙が溢れていたことに……。
「怖かったな」
安堂くんがにこっと優しい笑顔を見せて、私の頬を伝う涙を親指でそっと拭う。
その笑顔にツンと鼻の奥が痛くなって、また涙が溢れ出す。


