『んふふっ…そんなに構えなくても良いじゃない』
「?」
声が聞こえた。
澄んだ女性の声。
しかも耳からではなく、頭の中に直接響いてくる。
「妖精…?」
『あら、よく分かったわね』
目の前がキラキラして、
次の瞬間、視界全体がホワイトアウトした。
光が落ち着いて、目を恐る恐る開ける。
「ひゃっ!?」
眼前に顔が。
驚いて仰け反ると、先生の胸にトンと頭を打つ。
『ビックリしちゃった?』
「うるさい、黙れ」
イライラした声が降ってくる。
『やーん、ひどいっ!ご挨拶でしょ!』
「今忙しいんだよ、早く通せ」
『知ってるわよ、校長が呼んでることくらい。
でもアーサーちゃん。私が校長室の番人ってこと忘れてない?
素性が知れない人、通すわけにはいかないわ!』
「ちっ…」
腰に手をあてて言い合っていた妖精が『さて…』と、私に向き直る。
露出度の高い衣装に身を包んだ妖精は、私の胸に手をかざして目を瞑った。
『ふむふむ…はぁー、ふーん…ん?』
「?」
『うん…シーファ・レイヴェンね。親の職業は?』
「えと…羊飼いです」
『そう…なるほど。貴女、面白いわね』
目を開けると、今度は目を覗き込んでくる。
深層心理を探るような眼差し。
あまり気分が良いものではないなと思ってしまう。
『校長室への扉は開かれたわ。校長がお待ちよ』
妖精が指をパチンと鳴らす。
すると、石の円がゆっくりと上に上がっていく。
1階分くらい浮くと、正面に扉が現れた。
妖精が『じゃあね』と融けるように消えて行くと、代わりに扉が開いた。
先生に手を引かれて入っていくと、壁一面の本棚に目が行く。
色々な本や何に使うのか検討もつかない物が所狭しと並んでいる。
部屋は円形で2段建て。
壁の本棚沿いに左右階段が2つ、中央に向かっている。
そしてその階段の先には…
「アーサー君、お疲れさま。
…待っておったぞ、シーファ・レイヴェン。
わしはワブフォード魔術学園の校長、アポニル・ワブフォードじゃ。
長旅ご苦労じゃったの」
「いえ…」
校長先生は長い白髭を撫でながらにこりと笑った。
…ように見えた。
「エルンダム夫人から事情は聞いておるぞ。
大変じゃったのぉ…」
「…いえ」
「さて…お疲れのところ申し訳ないが君には早く学校に馴染んでもらわなければならないのじゃ。
小学校と2ヶ月分を1週間程で勉強してもらおうと思っている。
それまでは同じ寮の者と別行動になってしまうが…まぁ致し方ないじゃろう。
勉強以外はともに行動出来るぞ。
そして寮なんじゃが…明日の朝会時に発表する。今日の所は保健室で過ごしてもらおうか。」
階段をゆっくりと降り、ソファーに座るようにと手招きする。
