大きな門の隣にある、普通の大きさの扉の前に、ランタンを持った白髪混じりの女性が立っていた。
「あぁ、アーサー研修生。お帰りなさい…その子がシーファ・レイヴェンですね?」
「はい、教科書、制服等も揃えて参りました」
「お疲れさまです。校長先生がお待ちです。
そのまま引率お願いします。
馬と荷物は私が引き継ぎます。」
「はい。お願いします」
私の手を引き扉に入る。
石畳の円形の広場だ。
真ん中には像が立っていて、長椅子も何個か置いてある。
「あの、さっきの方は…?」
「ヘカテール先生だ。副校長で魔法学の授業担当。」
学校の両開きの大きな扉を少し開けて、身を滑り込ませる。
玄関の先にある廊下から明かりが、足元を照らす。
ちらほらと人が見えて、思わず一歩引く。
「…わっ」
不意に視界が暗くなる。
「怖いならフード被っとけ。
今授業中だからこれしかいないが授業終わったら廊下ぎゅうぎゅうだぞ。」
「ありがとうございます。」
マントのフードを前が見えるように直してから、歩き出す。
廊下に出ると、その広さに驚いた。
ピカピカした白い床。
正面の壁には自分の家の高さ位の窓がいくつも並んでいる。
窓ガラスの上にはステンドグラスが填められていて、とても綺麗だ。
「すご…」
「あっ、アーサー先生っ!」
「っ!?」
先生の陰にサッと隠れると同時に、女子生徒が先生に触れる。
二人組で、可愛らしい声だ。
同年代の人間に久しぶりに会うせいか、どきどきが止まらない。
「先生一日中居なかったね!
そのせいで授業全然面白くなかったんだからぁ」
「そーそー、眠かった!」
「寝るな!」
談笑を聞きながら、羨ましさ半分、怖さ半分。
話し掛けられたらどうしようと、手が震えてくる。
「あははー。…あれ?後ろにいるの誰?」
「っ!!」
冷や汗が吹き出るようだ。
顔が熱い。
硬直しながら展開を待つ。
無駄に息も殺す。
「あー、今急いでるからな。じゃっ」
「えー…また後でねっ!」
「バイバイっ!」
先生の助け船で場を抜ける。
助かった…という安堵感。
ふーっと息を吐く。