使い慣れた羊皮紙と先生のアドバイスで植物性の紙で出来た手帳を籠に入れた。

授業は実習が多いから持ち歩けるメモ帳があった方が良いという事らしい。


竹の定規、コンパスも入れる。



買い物らしい買い物するのは初めてで、見るもの全てが欲しくなってしまう。



「インクって色んな色があるんですね…」



中でも一番迷ったのが、羽根ペンのインクだった。


黒しかない物だと思っていたのに。



「まぁ黒と別に3色くらいあった方が良いかもな」



この中から3色…選択肢が多すぎる。



「お悩みですか?お客さま」



いつの間にか現れたメアリーさんに色について相談してみた。



「うんうんっ、わかるよ!」



メアリーさんは真剣な眼差しでインクを見つめる。


手に取ったのはピンク、黄色、水色。



「これが桜色、これがレモンイエロー、こっちがパステルブルーよ。

薄い色が可愛くて私良く使ってたなぁ」


「おー、良いですね。これがいいです」


「ありがと~」



籠に入れる。


他に買うものはないだろうか。



アーサー先生の顔を見る。



「あと筆入れ選んで終わりだな」


「はい。」



筆入れは羽根ペンの下に並んでいた。


沢山あるなぁと思いながら近付く。



「じゃあこれな」


「はい。…えっ」



サッと手に取る先生。



私のなのに選んじゃダメなんですか。



「文具に割く時間ねーからな。買ってやるから許せ」



さっさと会計に行ってしまう先生に小さく返事しながら、革の筆入れを見てしまう。







「はい、全部で銀貨3枚です。」


「はい。」



銀貨3枚をポーチから取り出して渡す。



「丁度ですね、ありがとうございます」



お金を受け取ると、メアリーさんが買った文具達をロゴ入りの紙袋に詰めてくれた。


ぽこぽこと紙袋が膨らんでいく。



「そうそう新しく入荷したインクがあるからオマケしたげるね!」


「い、良いんですか?」


「うん。売り出すかどうかは使ってから決めたいから、使ったら使った感じどうかお手紙頂戴?」


「はい!ありがとうございますっ」


「どー致しまして」



メアリーさんによると、その時の気分や使う人にあった色に変化するインクらしい。



メアリーさんに手を振りながら店を出る。



レスル村の中央にはある、大きな木の下のベンチに男女が座っていたのが目に入った。


あれは夫婦…いや、見た目で判断しちゃいけない。



そんなことを考えていてふと先生を見る。


…え、いない。



「置いてくぞー」



後ろから声が聞こえて振り返ると、既に遠くへ。