「…寒い」
目が覚めると、視界いっぱいの白。
「おはよう…」
マントの中のコリーをそっと撫でる。
艶々とした毛並みが気持ちいい。
「お目覚めですか、お客様。」
「あ、おはようございます」
手綱を掴んだまま振り返るおじさん。
きっと寝ていないのだろう。
ドラゴン便の店主はまだ薄暗い空を見て言う。
「もうすぐあっちから日が昇りますよ。」
顔を向けた方を見る。
地平線が細くオレンジに見える。
「わぁ…」
ゆっくりと昇り始める朝日。
森の中に住んでいる時には見たことのない光景。
パッと暗い蒼を吹き飛ばすように広がるオレンジ色。
眩しいのに直視できてしまう。
それくらい綺麗だった。
でも、昇り始めてしまえば早いもので
あっという間に丸い姿を現した。
「こんな景色を誰にも邪魔されずに見れる…ドラゴン便の特権ですわ、えぇ。」
「いいですねぇ…」
「まぁ、まだ何時間も掛かりますからね、リラックスしてください、えぇ。」
「ありがとうございます。」
それからしばらくは、
景色を見たり、すれ違う鳥たちを見たりしていた。
きゅるるる…
腕の中からそんな音がして、ハッと我に返る。
ボーッとしていたせいでコリーのご飯を忘れていたのだ。
慌ててポーチから乾燥コーンを1掴み取り出す。
「ご、ごめんねコリー…」
コリーの前にコーンを出してやると、ガツガツと食べ始めた。
それを見ながら自分もパンをくわえる。
