「お嬢ちゃん…」
「?…はい。」
腰を曲げたお年寄りが話し掛けてきた。
白髪で、顔の皺は深く年輪のようだ。
歩みはゆっくりとしていて、
大きなリュックの上にマットを丸めたような物をつけている。
おばあちゃんにはちょっとしんどそうな気もする。
「お父さんとお出掛けかい?」
私の前にリュックを椅子にして座る。
「あ、えっと…」
「えぇ、初めて遠出に連れていくんです。」
レオさんは私の代わりに話してくれる。
親子ということにするらしい。
「そうかいそうかい。
いいねぇ…私にも同じくらいの孫がいるんだけど、なかなか会えなくてね…」
一瞬悲しそうに目を瞑り、すぐににっこりと笑う。
「思わず話しかけてしまったよ…
おめさん達はどこに行くんだい?」
「ワブフォード魔術学園に行くんです。」
「あらぁ、私も随分前に通っていたのよ!」
昔を思い出してか、空を仰ぐ。
懐かしいわぁ…、と嬉しそうな顔をした。
「俺も通ってましたよ。」
「あらぁ、私のうちは貧乏だったから学費のために必死に勉強したものだわ。」
「学費…?」
「私立は少し高いわよねぇ」
チラッとレオさんを見る。
学費の意味を知りたかった。
予想は出来ているのだが…
「そんなことよりな…」
おばあさんはリュックの中をごそごそ探り始めた。
「これ、お嬢ちゃんにあげるよ」
「これは…?」
細い長方形の木箱。
「私は羽根ペンを作って旅しながら売ってるんだ。
お嬢ちゃん、学校で使って。」
「あ、でも…」
「同じの孫も使ってるんだ…
会ったら、ばあさんが会いたがってるって
伝えておいてね。じゃあ、またね。」
「あ、ありがとうございます!
絶対伝えますっ」
「えぇ、よろしくねぇ」
