走り続けてしばらく。
家からエルンダムさんの牧場くらいの距離を進んだあたりで、少し開けた道に出た。
道幅は3倍ほどに広がり、馬の足跡や、靴跡、細い線が沢山ある。
広い道に出ると、先頭のレオさんは馬を歩かせた。
私もそれに倣う。
不意に遠くから音がした。
ガラガラガラ…
台車を引くような音。
馬の足音と共に近付いてくる。
「少し端によろうか。」
レオさんも気付いていたらしく、左端による。
後ろを振り返って見る。
小さく何かが見えた。
2頭の馬が並んで大きな箱のような物を引いている。
どんどん近付いてくるそれは、あっという間に横に並び、追い抜いていった。
すれ違った時、箱についた窓から中が見えた。
人が二人ずつ向かい合って座っていた。
そして箱の外で馬の手綱を掴む男が一人。
「あれは…」
「馬車って言ってね、人や重いものを運ぶときに使う交通手段だよ。」
「へぇ…」
それから何回か馬や馬車が追い越して行ったりすれ違ったり。
正午近くになるにつれ、交通量が増えていった。
ドキドキと胸が高鳴る。
いろんな人がいる。
当たり前だが様々な顔。
見たことない服に、装飾品。
髪の色も違う。
「わぁ…」
「少し休憩しようかね。」
「はい。」
道の途中の拓けた場所に馬を止める。
そこには5人くらいが大きな岩の横に腰を下ろしていた。
ちょっと離れたところで私達も座る。
「疲れただろう、大丈夫かい?」
腰に下げた水筒から木の器に水を注ぎ、馬の前に置く。
それを見ながらレオさんが心配そうに訊いてきた。
「はい。…すごく、ワクワクしてます」
「そっか、それはよかった」
「世界は広いんですね…」
「もっと広いさ!」
笑いながら茶色い包みを手渡された。
イマナさんの手料理だと予想する。
開けると、魚と野菜の香草蒸しだった。
香草の香りが広がる。
「いただきます!」
「いただきます。」
美味しい…
さすがイマナさん。
一口食べると、今さらのように腹の虫が鳴く。
