薄暗い道を三頭の馬が縦に並んで走る。

馬がすれ違えるかどうかというくらいの、細い道だ。


整備されていない獣道みたいな地面。

いつもより尻が痛い。


しかも前にぶつからないようにと気を張り詰めたせいか、目も肩にも痛みが走る。



「もうすぐだぞ!」



それはすごく助かる。



目を擦りながら、もうすぐまでひた走る。









「馬を止めるぞ!」



先頭のレオさんが徐々に速度を落とす。


それに私、イマナさんと続く。


馬を降りたレオさんは牧場の門を開けた。



「ここが家だ。いらっしゃい!」


「お邪魔します…」



暗くてよく見えないが、牛の鳴き声が聞こえる。



二人に案内されてお邪魔した家は、自分の家より大きくて部屋も沢山あるみたいだ。


暖炉に残っている小さな火種から、シャンデリアの蝋燭に火を灯す。



「ごはんすぐに作るからちょっと待っててね。

2階の突き当たりの部屋を使っていいから荷物を置いてくると良いわ」


「ありがとうございます!」



笑顔で「どういたしまして」と言ったイマナさんに一礼して階段を登る。


2階には廊下の左右と突き当たり3つのドアがあった。


奥のドアを一応ノックしてから開ける。


真っ暗だ。



リュックを下ろして火種をもらいに行こう。


しかし、階段を降りかけたときあることを思い付いた。

下には降りず部屋に戻る。



せっかくだから父に教えてもらった魔法を試してみよう。





壁に設置されているランプに集中する。



父に教えてもらった魔法の基本中の基本。

小さかった私は失敗してしまったが、12歳の今ならきっと出来る!

…はず。


空気中の火の元素をそこに凝縮させるような感覚。

グッと意識を集中させる。

手に汗握る睨み合い。


チリッと何かが弾けた気がした。



「あっ…」



パッと火がつき部屋が明るくなった。


初めて魔法を成功させた瞬間だった。



よしっ!、と思わず拳を握る。