ボロい剣と、なるべく損傷のない革袋に入っている金貨を持って隠し部屋を出る。
鍵をしっかりと掛けてから収納から這い出た。
埃っぽい所から出たぶん、家の空気が新鮮だ。
外はもうオレンジ色の空。
調理器具をもとに戻し、ランタンの火を消す。
それと同時に馬の足音が聞こえてきた。
エルンダムさんかもしれない。
…また強盗かもしれない。
金貨と剣を抱き締めて寝室の中に逃げ込む。
ドアは少し開けておいて視界を確保した。
馬の足音が聞こえなくなると、人間の足音が近付いてきた。
剣の柄に手を掛ける。
「シーファちゃんっ!?」
エルンダムさんのようだ。
肩の力が抜ける。
エルンダムさんは私の姿が見えず焦っていた。
慌てて声を掛ける。
「え、エルンダムさん!」
「シーファちゃん!?…あぁ、よかった」
エルンダムさんは泣きながら私を抱き締めてくれた。
「よかった…シーファちゃん。心配したのよ…」
子供のようにえぐえぐと泣くエルンダムさんに思わず笑みが溢れる。
「ありがとうございます、エルンダムさん…」
「イマナ…シーファちゃんが困っているぞ」
男の人の声がした。
目をやるとお父さんより少しほっそりした男の人がいた。
きっとエルンダムさんの旦那さんだろう。
あらごめんなさい、と恥ずかしげに離れたエルンダムさんが紹介してくれた。
「シーファちゃんは初めて会うかしらね。
旦那のレオよ。」
「よろしく、シーファちゃん」
「はじめまして!よろしくお願いします…」
他人にあまり会ったことがないので、挨拶がちゃんと出来たか心配だ。
「しかし酷い状況だね…」
「そうね…」
二人はぐるりと部屋を見回した後、眉を潜めた。
