『愛する我が子、シーファへ

私達に何かあったら、お隣のエルンダムさんに手紙を出さして助けてもらってね。
カラスに手紙を持たせてください。

鍵を同封しました。
キッチンの下の収納の中に隠し扉があります。
中には私達の宝物があります。
鍵を無くさないようにね。

強く生きてね…』



お母さんお父さん…生きているの?



生きているのか、死ぬ前に書いたのか。

この手紙ではわからない。



封筒をひっくり返すと、金古美の鍵が出てきた。

他には何もないのかと封筒を覗き込んでみても、空っぽだ。


手紙を折り畳んでもとに戻し、まずはエルンダムさんに手紙を書こう。

整理した物の中から羊皮紙を取って、ポーチの中にあった羽根ペンで助けてほしい旨を書き込む。


エルンダムさん。

隣で牧場を営んでいる人で、私は奥さんと息子さんにしか会ったことがない。

確か息子さんは同じくらいの年だった気がする。

会ったことがある、と言ってももう何年も前だ。
ほとんど顔も覚えていない。

しかも隣まで馬を走らせても2時間は掛かると聞いた。



「じゃあ、エルンダムさんにお願いね。」



羊皮紙を丸めてリボンで結んで、カラスに渡す。

カラスは手紙を口にくわえると開けっ放しのドアから飛び出ていった。


硝子越しにカラスが見えなくなるまで見送る。

あれは誰の鳥なのか。

もし父か母の遣いならば二人は生きている可能性が高い。


そうであることを願いながら、カラスが見えなくなっても青空を見つめていた。