椎名は表情を歪めると口を開く。
「いの!だから俺と結希ちゃんはっ…」
「椎名っ!!」
椎名、それ以上は言うな。だから私は椎名の言葉に声を被せた。
私は、表情を怒ったり歪ませたりなんかしない。
ただ、声を発するだけ。
椎名に私の前で嘘をついて欲しくない。
叶うならば、私は2人の口から
偽りのない言葉を聞きたい。
やめろ、椎名のことは…全部わかるんだ。
日は沈んで、外は薄暗くなっていた。
あの日と同じように…空は紫をうつしていた。
そしてあの日、椎名は空を見上げていた。
どこまでも続く、高い高い空を
…見ていたんだ。
隣にいる人の手を自分の手で包みながら、


