「あはは。魏姫ジョーダン。似合ってるよその服」

「うっさい。早くいくよ」

ムスっとした顔が見られたくなくて早足で階段を降りる。

いつもと違う、イベントの日だったからだろうか。


あたしは階段の罠を忘れていた。


階段の下から5番目が少し低い。

わかりきってる事だからひっかかることはない。


しかし。



「うわっ!!!」



気が付いても後の祭り。

あたしの体はきれいな弧を描きながら傾き始めた。

ああ、絶対アザが増える。

またお母さんが心配してくるな。

あたしの身体だと目立つんだよな。

できれば傷作りたくなんだけどなぁ。

自力で戻ることもできないから流れに身を任せようと思った途端。



パシッ。



重力に従っていた体は一気に引き上げられ元の場所に戻っていた。

「ったく、あぶねーぞ。こんなこと体で覚えろ。バカ」

上を見ると焦った顔の魅火流がいた。

助けてくれたんだと自覚した途端、魅火流に捕まれた手首が熱くなった。

なんでだろ?

ただ掴まれただけのはずなのに。

心無しか心拍数も上がっている。

どうしてだろ。


「ありがと」


小さな声でつぶやいた。

なんとなく恥ずかしいような気がして素直に言えなかった。