レヴァンヌ城の大広間に、煌びやかな衣装を身に纏った多くの貴人たちが集っている。
皆、この国の貴族や、他国から訪問客たちだ。

一段高い位置から皆を見下ろすように座っているのは、レヴァンヌ王だ。
その隣には、見事なマゼンタ色の髪を腰まで伸ばしたアイリス姫もいる。

国王が手を叩いた。
その音に、その場にいた皆が一斉に口を閉じ、演奏家は音楽は止め、大広間は静粛に支配される。

「皆、今日は、我が娘アイリスのために集まってくれて、心から感謝している。
 さて、既に知っている者もいるだろう、今日は、アイリスの16歳の誕生日……
 ……そして、婚約者発表の日でもある!」

国王の言葉に、一同の中から驚きの声とざわめきが起こったが、
再び国王が手を叩くと、すぐに静まる。

「今、この場には、婚約者候補の王子様方もおられる。
 しかし、まだ正式に誰が婚約者となるかは決まっていない。
 そこで、王子様方にこの場を借りて、アイリスの前で自己紹介をして頂きたい。
 よろしいですかな?」

国王の視線に、まず前に出たのは、背の高い金色の髪を肩まで伸ばした見目麗しい男性だった。

「では、まず年長の私からご挨拶を……
 お初にお目にかかります、アイリス姫。
 私は、マフィス国の第一王子オーレン=マフィスと申します。
 お噂に違わぬ美しさ……一目で心を奪われました。

 マフィス国は、魔法や魔術に長けた国です。
 もし、アイリス姫がご希望くださるなら、私が姫君をマフィス国へお連れ致しましょう」

先陣を奪われたことにやや焦りながら、背の低い黒髪の少年が前に出た。
まだほんの子供のようだが、その目には、深い叡智の光が宿っている。

「お初にお目にかかります、アイリス姫。
 私は、琳国の第一王子 琳 楊賢と申します。
 アイリス姫の聡明さは、私の国にも届いております。

 琳国には、賢者や学者が多く、歴史と知識に溢れた国です。
 アイリス姫は、本がお好きと伺いました。
 もし宜しければ、ぜひ我が国へ来て、我が国が誇る大図書館で、
 お好きなだけ本をお読みになってください」

今度は、オレンジ色の髪をした天使のような可愛らしい少年が前に出る。

「お初にお目にかかります、アイリス姫。
 僕は、レジェンス国の第十六王子リアード=レジェンスと申します。
 レジェンス国は、ご存じのとおり、芸術に秀でた国です。
 姫がご希望するなら、我が国一の腕前の絵師に、姫の自画像を描かせましょう」

四番目に名乗ったのは、青い髪をした青年だ。

「お初にお目にかかります、アイリス姫。
 私は、エルバロフ国の第二王子リュグド=エルバロフと申します。
 ……困ったな、まさかこんなに可憐な少女だとは、正直緊張して胸がどきどきしています。

 エルバロフ国には、深い森があり、薬草や医学に詳しい者が多い国です。
 僕自身、幼い頃から医学についての知識を教えこまれてきました。
 もし、姫がご病気や怪我をされるようなことがあれば……
 もちろん、そのようなことがないよう祈ってはおりますが、
 その時は、僕が、この知識を使って、姫の命を救うとお約束致します」

最後に、体格の良い赤い髪の男が前に出た。

「え~っと……まずは、初めましてだな!
 俺は、ジグラード国の第一王子アラン=ジグラード。
 あー、姫さんは、格闘技とか好きか?
 ジグラード国は、戦士の国。強い戦士がたくさんいるから、退屈しないぜ。
 特に、コロセウムっていう闘技場は、スリルがあってすげぇ楽しい。
 姫さんが興味あるなら、一緒に連れてってやるよ」

5人の王子たちは、一斉にアイリス姫に向かって手を差し伸べた。

「「「「「姫。私と一曲、踊って頂けますか?」」」」」


――――あなたは、誰の手を取る?


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