これからどうしようか、と考えた時、
ちょうどタイミング良く、私のお腹がぐぅと鳴った。

(そう言えば、朝食もまだだったわ。
 女将さんのお店にでも行こうかしら)

――酒場へ向かった私は、酔っ払いたちに絡まれたところを一人の魔法使いに助けられる。
――冷たい目をした金髪の彼は、【オーレン=マフィス】と名乗った。

アイリス
「ねぇ、ちょっと待ってよ!
 さっきから、どうしてそんなに早く歩くの?
 付いて行けないわ」

オーレン
「……時間がないんだ。
 もっと早く歩けないのか」

アイリス
「歩けないから言ってるのよ!
 女性と歩く時は、歩調を合わせて歩くのが礼儀ってものでしょ」

オーレン
「勘違いするな。
 俺達は、利害関係が一致したから、同行しているだけだ。
 馴れ合うつもりは、毛頭ない」

アイリス
「馴れ合いって……。
 私は、ただ礼儀の問題を言ってるだけじゃない」

オーレン
「お前がその五月蝿い口を閉じて歩く、と言うなら……。
 いくらでも歩調を合わせてやるさ」

アイリス
「……な、何よそれ!
 コミュニケーションも取るなって言うの?」

先程から全くこちらを振り向こうともしないオーレン。
それが突然、歩みを止めたかと思うと、初めて後を振り返った。

オーレン
「俺に関わるな。……と、言っているんだ。
 ……自分の身が可愛いならな」

――人間嫌いの冷たい魔法使い。
――でも、それには何か理由がありそうで……

オーレン
「お前は、 “愛”が何かを知っているとでも言うのか?」

アリス
「知ってるわ。
 少なくとも、恋愛だけが愛じゃないもの」

オーレン
「お前に注がれる愛が偽りのものだと、どうして疑えない?」

アリス
「そんなの……そんなの、考えた事もない」

オーレン
「ほぅ。
 よっぽど恵まれた育ち方をしたらしい」

アイリス
「あなたは、信じられないの?
 恵まれない育ち方をしたって言うの?」

オーレン
「…………」

オーレン
「目に見えるもの全てが真実とは限らない」

アリス
「……どうゆう、意味?」

オーレン
「そのままの意味さ」

――オーレンの心の闇に触れる度、私は、彼のことが気になっていく。
――そして、突然、苦しみ出したオーレンを見て、私は、彼の秘密を知ってしまう。

オーレン
「うっ……!」

アリス
「……オーレン?」

オーレン
「来るなっ、……俺に、近づくんじゃない!」

アリス
「どうしたの、苦しいの?
 どこか怪我でも……」

オーレン
「来るなーーーっ!!」

アリス
「っ?!」

オーレン
「……頼むから…………見ないでくれっ!!」


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