しばらくの沈黙の後、
唐突に、ルカが口を開いた。

「……わかりました。では……」

(うそ、わかってくれた……?)

「私も一緒に行きます」

「……え?」

 予想もしていなかったルカの答えに、私は、思わず間の抜けた声を上げる。
ルカは、さも当然でしょう、といった態度で言葉を続けた。

「私は、あなたの護衛役ですよ。
 姫の御身を守るのは、至極当たり前のこと」

「それは、そうだけど……で、でも……」

「信用出来ませんか?
 私が姫を城に連れ戻すとでも?」

 思っていた事をズバリと当てられて、ドキッとする。
いつもそうだった。
まるでルカには、私の心の中が見えているかのようだ。

「ご安心ください。
 私は、姫の味方です」

そう言って、ルカは優しく笑った。
何かを企んでいる風でも、嘘をついている様子もない。
本心から言っているのだと解る笑みだ。

「……まぁ、私の同行を許して頂かない限りは、
 姫を一人で行かすわけにはいきませんけどね」

(……つまり、お目付け役ってことね)

 確かに女一人で歩き回るよはり、ルカが居てくれた方が断然心強い。
仮にもルカは、近衛隊隊長だ。
でも……

「……いいの?」

「何がです?」

「止められるかと思った」

「私が止めたくらいでやめるようなお人ではないでしょう、あなた様は」

「そ、それは……まぁ……」

あわよくば、隙を見て逃げる気満々でした、とは言えない。

「それに……」

「……それに?」

「……いえ、何でもありません」

ルカは、軽く頭を横に振ると、笑って言った。

「良い機会ではないですか。
 御自分の事です。ゆっくり考えられると良いでしょう」

「ルカ……」

私が感動に目をうるませてルカを見ると、ルカは、びしっと3本の指を立てて見せた。

「その代わり、3日間だけですからね」

「……え?」

「〝え?〟じゃ、ありません。
 先程、御自分で仰ったではないですか。
 〝3日でいい〟と」

「そ、それは、言葉の文というか……
 なんというか……本気じゃない、というか……」

「いいえ。御自分で仰った言葉には責任を持ってもらいます。
 約束致しましたからね、3日間だけです」

「そ、そんなぁ~……。
 せめて1週間とかじゃダメ?」

「ダメです」

「うぅ~……こんな事なら、もっと欲張れば良かった」

頭を抱えて後悔する私に、ルカは容赦なく言い募る。

「期間延長は認めません。
 だから、3日経ったら教えてもらいます」

「……教えるって……何を?」

「姫の出した答えを、ですよ」

「私の……答え……」

城の中で暮らしていたとはいえ、16年の間見つけることができなかったのだ。
果たして、たった三日で私の王子様を見つけることができるものなのだろうか。
私は、急に不安になった。

「だから、よくお考え下さい。
 それからどうするかは、姫の判断に任せます」