「今まで、ありがとう。」




こちらこそ、と言う前に、

彼の唇が私の口を塞いだ。

初めてのキスだった。



今までに感じたことのない、

柔らかい感触だった。



でも、不思議と嫌な感じはしなかった。



1秒あったか、なかったかの、

長くも短くもない、キスだった。



でも、私は今までの人生の中で、

一番幸せな時間を過ごしていた。



彼の唇が離れた。


私の唇は少し濡れていた。

濡れているのを感じると、

なぜか恥ずかしさをおぼえた。





彼は、にっこり笑った。

そして、言った。


「そろそろ、帰るか。」


その後、私達は別れを告げた。