誰がどうとか何がどうとか何をしたからそうなったとか、世の中はそう簡単にはいかないものだと思う。
そんな合理的に全てのことが運ぶほど、世界は簡単に出来ていない。

いや。
今までは精々そんなものだと思っていた。

1+1=2で間違いじゃないし、9−3=6で正解だ。


「そうだよなあ…。」


それでいいんだ、俺はそんな合理的な世界で生きていたし、これからもそんな世界で生きていきたかったんだ。

摩訶不思議とかちょっとファンタジーとか、ラブな歯痒い虫酸が走るようなコメディとかもごめんだったんだ。
ごめんていうのは語弊があるかもしれない。

だって、考えたことすらなかったんだから。


「ハロー。」


このひとことで、そんな俺の現実的な日常は跡形なく崩れ去る。


「そうだよなあ…。」


今更無意味な呟きを零して元凶を鏡越しに眺めれば、遠い目をした俺とは正反対に、うきうきしながら俺の髪で遊んでいた。


「このヘアスタイル、超イカす!」

「…モヒカンにしないでよ。」


さっき流した筈のシャンプーをまた塗りたくられていた俺。

前途多難な予感。