俺は武安 はじめ。
ちょっと金欠で生活苦と言えなくもない普通の大学二年生だ。
財布に夏目さんが三人いれば両手を上げて万々歳の、諭吉さんがいたら思わずちょっとはしゃいじゃったりする、至って普通の成年男子だ。

夢見がちでも妄想癖でもない。
金欠故に自炊をし、今日を生き抜いて明日に向かうような、どちらかといえば現実主義な人間。

そんな俺が、珍しく昼間っから風呂に入っていた。


「今日あっついなー。」


可哀相に思った友達がくれたちょっと高価なシャンプーでがしがし髪を洗いながら、あまりの暑さに思わずぼやく。

ああ、あがったら洗濯しよう。
今日は講義もないことだし。

そんなことを考えながら、湯船に手桶をつけようとしたときだった。

ぶくぶくぶくっ。


「…ん?」


誰も入ってないバスタブから、小さな気泡が浮かんでは弾けて消える。

故障か?
安アパートだしな。

そうは思いつつ、実際そうだったら困る。
どうしたんだとシャンプー塗れなままに覗き込んだ

のが、

間違いだった、かもしれない。