紅いホワイトデー

「あ……あの、志乃ちゃん!」


「伊吹くん?」


いつもは彼女から話し掛けて来てくれていたから、今日は僕から話し掛けてみる。


「あの、放課後、空いてるかな……」


「うん、大丈夫」


なんで?と不思議そうにしてるけど、少しの間、無視をする。


「じゃぁ、放課後、図書室で……」


「了解。図書室ね」


「志乃ー?」


「あー、はいはい」


志乃ちゃんは他のクラスの子に呼ばれて、そちらに行く。


きちんと、誘えた。


時間も、場所もきちんと伝えられた。


不穏な心臓の高鳴りも、放課後までの我慢だ。











放課後。


僕は図書室にいる。志乃ちゃんにも分かりやすいように入り口からすぐに見える場所に。


窓に目を向ければ、グラウンドでサッカー部が練習をしていた。


背景に揺れる夕焼けが綺麗で、まるで青春ドラマを見ているような気分になる。


ガラリと、ドアが開く音が背後で聞こえた。


「いた……伊吹くん!」


僕がいないでは、と思っていたのかほっと安心したような表情をする。


「志乃ちゃん……」


「どーしたの?」


「こ、これ……バレンタインのお返し」


きょとんとして、僕の顔を覗きこむから、ぐんと顔と顔の距離が近くなる。緊張で笑顔がひきつってしまう。


「わぁ。ありがとう!」


中身をみて、びっくりした顔をして僕の顔とチョコレートを交互に見る。


その姿が可愛らしくて、ついつい笑みが溢れてしまう。


「あ……あの!」


チョコレートから意識を僕に向けさせるために、わざと少し大きな声で言う。


「ん?」


微笑みを浮かべて、少し首を傾げる姿に僕の心臓はさらに高鳴る。


言わなきゃ。今が、チャンスだ。


汗で湿った手に力を入れて拳を作る。


「ずっと……好きでした!」


「えっ……」


「ぼ、僕は大して顔も良くないし、運動だって出来ない。女心なんて未知の世界だ。……でも、君のことを一番に想っています。つ……付き合って下さい!!」


「え、あ……い、伊吹くん!?」


ドクン……ドクン……と僕の身体がまるごと脈を打っているように心臓の音がうるさい。


迷惑、だろうか。こんな地味なやつに告白されるなんて。


彼女の困った顔をこれ以上見ていられなくなって、瞼を固く閉じた。