頼めば、もちろん入れてくれるが、どうしてこのタイミングで、みんなにコーヒーを・・・?

「水野く~ん、そろそろいい?」

高野主任のおねだりをするような言葉に

「どうぞ!お召し上がりください!」

水野君は笑って答えた。

「いただきま~す」

みんなが手を伸ばした先に、それはあった。

並んでいるデスクの、中央辺りに置かれたバスケット。

「うまいよ、水野君!」

営業二課の津村主任が声をかける。

「ありがとうございます!」

見れば同じ物が、二課のデスクにも置いてある。

「チョコケーキ?」

宮前が、水野君に訊く。

「“ ブラウニー ” です」

水野君が、満面の笑みで答える。

「よかったら、林さん、清水さんも食べてくださいね。数は、ありますから」

訳がわからずに固まっている俺に、水野君が近付いてくる。