あの日のリボンは優しい微笑みで。

「あなたは…だれ?」

とりあえず聞いてみた。
素直に、嘘をつかずに。
   

ぼあっと、生温い風が身体を通りぬける。

その男の子は、ぼそっとつぶやいた。

「綺麗な声…
 あ、僕?
 僕の名前はななせかず。」

「君は?
 こんなとこでなにしてるの?」

ななせさん、か。


「こんにちは。私は、きなきかな。
漢字でかくと木に鳴くに海に菜の花の菜だよ。」


ななせさんは、慌てたように名前の漢字のせつめをしてくれた。

「僕は、普通の七瀬に海に澄むって字なんだ。あ、そういえば、かなちゃんも海がつね。僕と同じだ!」