三角の距離

-翔side-


放課後。



夕方の、誰もいない教室がオレンジ色の光で染まる。



窓の外を見ればサッカー部や野球部が頑張ってるのが見える。



まだひろきはいなかった。



部活、いいのかな…。



なんてひろきのこと考えてたら、だんだん申し訳ない気持ちになった。



俺なんかのために自分を捨てるなんて、どこまで優しいんだよあいつは…。



でもひろき。



お前の思いは届いたから。



頑張るから。



そんなことを思いながら、ただひたすらに時間が過ぎるのを待っていた。





4時55分。




ガラガラッ。



勢いよく開いたドア。




「はぁはぁ。翔…。」




息を切らして入ってきたのはななみだった。



やっぱりどこかでひろきが忘れられなくて、少しだけ笑ってみせた。



緊張が解けたように、ななみの目から涙が溢れた。



それを見て俺の足が自然と動いた。

だけど触れたら壊れてしまいそうで、消えてしまいそうで恐い。



そんな思いから、そっとななみの肩に触れる。




うん。大丈夫。




いままでの想いを全て込めて、ぎゅっと抱きしめる。




「しょ…ぉ。」




俺にしか聞こえない声で、俺の名前を呼んだ。



同時に、その手に力をいれた。