ぼくは雪遊びがだいすき、おねえちゃんとよくやった。
雪だるまを作ったり、雪合戦をしたりしたことを思い出した。

「雪かな?」

さわってみようって思って、しゃがもうとしたんだ。
でもぼくの足は地面についてなくて、ぼくの体はフワフワ浮いてたんだ。

「ぼく、飛んでる?」

ぼくの体はぼくが思う方向にすいすい飛べた。
羽根もないのになんでだろう、すごく体が軽くて、すばしっこくでもゆっくりでも飛べる。
くるっと宙返りしてみたり、高くジャンプしてみたり。

目を閉じて、ぼくはそのまっしろな場所を飛び続けたんだ。
耳に聞こえるのは、ぴゅうぴゅうっていう風の音。
ぼくが速く飛んだら「ぴゅうぴゅう」、ゆっくり飛んだら「ぴゅうう、ぴゅうう」

目を開けてみたら、どんどん景色が後ろに下がっていった。
どこまでもいける、どこにでもいける。
ぼくはおねえちゃんにもこのきれいな景色を見せてあげたかった。

立ち止まったら、キラキラしたものが僕の上から降ってきた。
小さなお星様みたいな、あったかいカケラ。
それがちょっとずつ集まってきて、男の子の姿になった。

その男の子は大きく口を横に広げて、にっこり笑ったんだ。

「きみが、新しい風の子?」
「風の子ってなあに?」
「風の子っていうのはね、世界中を飛び回る風になる子供のこと」

名前は風太っていうんだって。
風太くんはぼくより少しだけおにいちゃんだった。

それで一緒に飛ぼうって手を引いてくれたから、ぼくはうんって大きくうなずいたんだ。