そして、一ヶ月後。
私は高校の入学式を迎えた。
一ヶ月で、悠希のことを忘れられるはずもなく。
新しい環境に騒いでいる他の生徒の中で、私はただ一人、沈んだ気持ちで机を見ていた。
私の心は……真っ黒だった。
…ふと、窓から外を見ると、
鳥が気持ち良さそうに羽ばたいている。
私も、羽根があれば…どこか遠くに行くことができるのに………。
「弥優( みう )さん……」
「柳沢 弥優( やなざわ みう )さん!」
「は、はい!」
名前を呼ばれて立ち上がる。
周りがクスクス笑っているが、気にする程、心に余裕がない。
……忘れなきゃ。
………わかってるのに。
……できないよ…。
席に着き、君から貰ったストラップを握り締め、私はまた…空を見上げた。
優雅に羽ばたく鳥が、私の心と違って眩しく見えた。
