君と別れて、帰路に着く。
街路樹の桜は、雨に濡れているにも関わらず、綺麗に咲いている。
中学で出会って、此処で告白されたなぁ……。
ふと、桜を見上げる。
雨が頬を濡らすことも気にせずに、目を閉じる。
『…貴女のことを見ていました。まだ、お互いの事何も知らないけど、僕は、君のこと……支えたいと思っています。付き合ってくれませんか?』
…あの時は驚いたなぁ……。
でも、必死な顔を見て興味本意で付き合い始めたんだっけ…。
……今考えてみれば、私に対して何か意見したり、ケンカしたり、しなかった気がする……。
印象が違ったり、しなかったのかな?
そういえば、色々したなぁ……。
遊園地デートしたり、海に行ったり、お泊まりしたり……。
……君との思い出が頭の中で再生されていく。
……いつの間にか、傘は手から離れて地面に落ちていた。
……頭の中で思い出を再生しながら、私は思った。
……別れたくない。
……離れたくない。
……一緒にいたい……。
……置いていかないで……。
…1人に…しないで……。
抑えていた涙が溢れ出す。
「悠希(ゆうき)………。」
3年間呼び続けた君の名前は、私を苦しめる言葉となり、胸を締めつける。
…でも。
呼ばずにはいられない。
泣きながら、君を呼ぶ。
来るはずなどないと知っていても。
君を望んでしまう心は止められない。
君が…君が大好きだから。
「悠希…………。」
私は君を呼び続けた。
その声は、雨の音にかき消されて。
君にはきっともう…届かない。
私の恋と同じように…
桜も雨に打たれて散っていた。