こっ、これは…おんぶと言うことでしょうか…っ?
高遠くんの広い背中を前にして、私は固まる。
「そっ、そんな…いいよ!私、重いし!」
『大丈夫だから。早く手当しないと、次の試合始まるんじゃないの?』
高遠くんの言葉にハッとして試合会場の時計を見ると、次の選手収集まであと25分。
早くいかないと、本当に遅れちゃう。
『ん、乗って。おぶったげる。』
「……っ、」
私より逞しい広い背中。
素直に高遠くんの優しい厚意に甘えればいいのに、どうしても恥ずかしさとか申し訳ないとか、そんな気持ちが勝ってしまう。
『俺の世界……、見てみたくない?』
振り返った高遠くんが私を見つめて、ちょっと意地悪な瞳で聞く。
そう言われてしまうと、心の底から湧いてくる好奇心。
高遠くんがいつも見てる世界はどんなものなんだろう。
「っ……うん!」
気づけば私は首を縦に振っていて、高遠くんの温かくも広い背中に体を預けた。

