『小日向?』
「っ、た…高遠くん…。」
人ごみの中、壁を伝ってソロソロと試合会場を後にしようとしていると、後ろから掛かった声に振り向いた。
そこには、体操着姿の高遠くんが首をかしげて私を見つめていた。
『どうかした?歩きづらそうだけど…、』
内緒にしようとしてたのに、一瞬でバレてしまった足のケガ。
手をついて歩くんじゃなかったと思うけど、壁に手をついておかないと歩けそうにない。
「その……さっきの試合で捻挫しちゃったみたいで。」
『えっ!?…大丈夫?』
「うっ、うん。とりあえず保健室に行こうと思って、」
なるべく大げさにならないようにと笑顔で接してる私だけど、それとは対照的に高遠くんの表情は硬くなっていく。
『……着いていこうか?』
「えっ、」
『とりあえず…乗って。』
突然しゃがんで私に背を向けた高遠くんに、私は驚きの色を隠せなかった。

