『……そんなに読みたいなら、貸そうか?』
「えっ、本当に!?」
駅のホームで電車を待っている間、隣で読みたい読みたいと言っていた小日向にマンガを貸そうかと言うと、嬉しさで飛び跳ねるように小日向は喜んでくれた。
自分の感情をそのまま表情に出す小日向を見下ろしながら、ただただ可愛いと思う。
「ありがとう、高遠くんっ!」
『っ……どういたしまして。』
俺だけに向けられるひまわりのような笑顔に、俺の心はドキリとしてしまう。
…いや、小日向と2人でいること自体、俺の心臓はバクバクなんだけれども。
プシュ…ッ
「あっ、あそこ空いてるよー。」
俺たちの乗る電車が到着して、2人で乗り込むと、ちょうど2人分の席が空いていて、小日向が俺の腕を引っ張る。
おいおいおい、これは…っ!
小日向は俺の腕を掴んでいることなんて気にしていないのか、席に座った俺に良かったねーなんて言って笑ってた。
パッと俺の腕を掴んでいた小日向の小さな手はすぐに離されて、話題は今日のHRでのことに変わった。
「高遠くんはクラスマッチ何に出るの?」
『あー…俺はバレーかな。』
2週間後に行われるクラスマッチの競技内容が今日の帰りのHRで発表されて、そのままチーム分けがなされた。

