――高遠 Side――
面倒な図書室当番。
放課後、それほど図書室にやってくる生徒なんていないのに、毎日夕方の5時30分まで律儀に開放する図書室。
本に興味なんてないし、読書したって気づけば寝てるし、図書委員なんて他に良い係がなかったからなっただけで。
でも、面倒な図書室当番になったことを、これだけ有り難く思ったことはない。
『高遠くんは、どんなマンガが好き?』
「えっ、」
ボーっとしていると、横から控えめに届いた小さな声。
小日向を見下げると、興味津々に俺を見つめる小さな小日向がいた。
……なんだよ、上目遣いなんて…可愛すぎだろ。
『あー…、ダンクシュート、とか?』
唯一俺の部屋で全巻揃っているマンガのタイトルが、出任せに口から出る。
それを聞いた小日向は、へぇー!読んでみたいなーっと素直に感想を述べている。
小日向と初めての下校。
それもこれも、俺の図書室当番のおかげだ。
「ダンクシュートって、バスケのマンガだよね?」
『ん?うん。』
「アニメはちょっと見たことあるんだけど、面白いよねー!」
つい1か月ほど前の、初めて話した時のドギマギしていた小日向は嘘のように、今は俺に輝かしいほどの可愛い笑顔を向けてくれる小日向。
そんな小日向の隣で俺は、心にじんわりと温かいものが広がるのを感じた。

