「まだかなぁ…。」
さっき階段前で、職員室に図書室のカギを返却しに行く高遠くんと別れて、下駄箱で靴を履き替えて高遠くんを待って数秒も経たずに、私は高遠くんはまだかまだかとキョロキョロしちゃう。
私の代わりに本を取ってくれたり、無邪気な笑顔を浮かべたり、一緒に帰ろうと誘ってくれたり、頭を撫でてくれたり、今日一日でこんなに高遠くんと関われるなんて、思ってもみなかっただけにすごく嬉しかった。
色んな高遠くんを目の前にして、どんな高遠くんを見ても、やっぱり"好き"という感情が溢れてしまう。
こんなに好きで…大丈夫かな、私。
『お待たせ。』
「っ、あっ、ううん!そんなに待ってないよ!」
頭に想い描いていたその姿を前にして、またドキン…ッと私の正直な胸は小さなことでも高鳴る。
高遠くんの隣にいる、たったそれだけのことなのに、どうしてこうも幸せな気持ちになるのだろう。
素直に嬉しくて、楽しくて、もっと一緒にいれればいいのに、なんて欲も出ちゃう。
高遠くんの隣を歩いて、一緒に帰ることだけでも満足なのに、私の心はもっと、もっとって今以上のことを欲しがる。
『小日向って読書する時、めっちゃ集中してるよな。』
「そっ、そうかな……?」
私の知らない間に、勝手に高遠くんに観察されていたことを知って、恥ずかしくて顔を上げられない。
こんな赤い顔…見せらんないよ///
そんな私に気付かずに眩しい笑顔で私に話しかける高遠くんと一緒に歩く帰り道は、いつもよりも新鮮で、キラキラと輝いて見えた。

