キーンコーンカーンコーン…


午後5時30分。

図書室解放終了のチャイムが静かな図書室に鳴り響いた。


パタン…っ


今まで読み耽っていた本に栞を挟んで、本を閉じると同時にふぅーっと息を零した。

もう半分まで読んじゃった。ちょっと読むつもりが、ついつい図書室が閉鎖する前まで読書に没頭してしまうのはいつものこと。

――帰らなきゃ。お兄ちゃんが心配しちゃう、と図書室の時計を見ていると、フッと私に影がかかった。


『小日向。』

「っ、高遠くん…!」


閉鎖前の図書室には、私と高遠くんしか人はいなかった。

いつから、2人きりだったんだろう。本に夢中で、全然気が付かなかった。

カウンターにいたはずの高遠くんが近くにいて、無条件に私の鼓動は忙しなく鳴り響く。


『もう帰るだろ?一緒に帰ろう。』

「っ……うん!」


予想もしていなかった嬉しいお誘いに、私はちょっとビックリしつつも、首を縦に振って笑顔を見せた。


『俺、図書室の戸締りもしなきゃいけないから、先に下駄箱に行っててくれる?』

「うん、分かった。」


私が座っているのに対して高遠くんが立っているから、高遠くんを見上げる角度がすごく大きくなる。

わー…私が座るとこんなに差が開いちゃうんだ…。ま、私が立っててもあまり変わらないけど。

そんなことを思っていると、頭に乗せられた高遠くんの大きな手がポンポンッと優しく叩かれて、さらに私は心を弾ませてしまう。