『本、好きなんだ。』

「えっ…?ぁ、うん。私…活字中毒なんだ。」


私はこんなにもドキドキして戸惑わずにはいられないのに、なんとも思っていないのか高遠くんは平然と本の話をする。

っ……こんなこと、高遠くんにとって普通なのかな、

背の高い高遠くんならば、背の低い子が高い物を取れなくて困っている時に自分が取ってあげることが日常茶飯事であってもおかしくはない。

なんだか私だけがキュンキュンしていて、ちょっと悲しい。

恋する乙女は大変だ、と思った。


『へー…。小日向が活字中毒って、なんか意外だな。』

「そっ、そうかな?」

『うん。俺のイメージでは、マンガとか好きそう。』


詳しく高遠くんの持っている私へのイメージを聞きたいところだけど、ここでガッツクのはおかしいだろう。と思って私はあははと空笑い。


「マンガも好きだよ。…華ちゃんには負けるけどね。」

『ふっ…確かに、柴戸好きそうだな、マンガ。マンガ読んで一日潰してそう。』

「あ、それこの前華ちゃん言ってたよ。日曜にマンガ一気読みしてしまったって。」

『マジ?』


クククッ、とさも可笑しいと笑う高遠くんにつられて、私も笑顔になる。

高遠くんの優しい笑顔も好きだけど、こういう無邪気な笑顔も好きだな、と思った。