やべ、起こしたかも、と焦っていた時、
『んん…っ』
「……っっ」
俺の手を掴んで自分の頬から離した後、小日向はテーブルの上で俺の手を掴んだまま、起きることはなかった。
夢の中で無意識な行動をとる小日向を目の前に、俺はドキドキが止まらない。
キュ…ッと、強くない力で握られている自分の手を見て、小日向の手を自分から離すことくらいできるのに、それをしようとは思えない。
俺…予想以上にやられてるのかも、小日向に。
そう思った瞬間、顔に全ての熱が集中していくのが分かった。
きっと今の俺は、人生最大に赤面していることだろう。
思えば、今日一日、学校では見ることのできない小日向の意外な一面をたくさん見ることができて、俺は相当浮かれている。
お兄さんとのちょっとキツメのやり取りとか。
家族の間でしか聞けない小日向の博多弁とか。
空になったコップを見つけるとジュースを注いでくれたり、空になったお菓子は捨てて新しいものを出したり、小さなところで気を配ってくれてるとことか。
今日の小日向は、俺にとってはとても新鮮で、小さな小日向の行動や反応や仕草に気を取られてしまう。
可愛すぎる小日向をこれ以上見つめているといろいろな意味でヤバくなってきそうだった俺は、未だに握られている左手はそのままに、英語の勉強を再開するのだった。

