冷蔵庫から3本目となるペットボトルジュースを手に部屋に戻ると、勉強してると思っていた皆は談笑しながらお菓子をかじっていた。
「ジュース持ってきたよー。」
『おっ、ありがとー!』
テーブルにジュースを置いて、高遠くんの隣に座り、空になった皆のコップにジュースを注ぎ分けた。
『ねぇねぇ、雛乃っ』
「ん?何?」
テーブルの中心に置かれているポテトチップスに手を伸ばし、ポリポリと食べていると、目をランランとさせて興奮している華ちゃんに話しかけられた。
今日の華ちゃん、すっごく楽しそうだな。
いつになくはしゃいでるし…、そんなに久松くんと勉強できるのが嬉しいのかな?なんてことを考える。
『お兄さん、どこにいる?』
「え?…お兄ちゃんなら、今リビングでテレビ見てるけど…?」
この場にはいないお兄ちゃんの話を振られて、?マークを浮かべる私。
今日はやけに、華ちゃんはお兄ちゃんのことが気になっているようだ。
……久松くん、お兄ちゃんに焼きもち焼かないといいけど。…あ、でも久松くんはクールだし、そんなことしないか。
『数学わかんなくてさー。お兄さん理学部でしょ?ちょっと聞いてきてもいい?』
「!う、うん。いいと思うよ。」
あの勉強嫌いな華ちゃんが、お兄ちゃんから数学を教わろうとするなんて…!
明日は雨でも降るんじゃないかと思っていると、華ちゃんは数学のテキスト類をまとめていた。
『宏太も化学分かんないって言ってなかった?』
『え?――ぁ、あぁ、じゃぁ…俺も行こうかな。』
勉強道具を手にした華ちゃんに言われて、久松くんは慌てて化学の問題集をバッグから出している。
『じゃっ、お兄さん借りるねー!』
そう言って、華ちゃんはちょっと挙動不審だった久松くんを連れて部屋から出て行った。

