「良かった。この焼きうどん、九州の醤油で味付けされてるから、あんまり口に合わないんじゃないかと思って。」
『…そうか、確かにちょっと甘いかも。でも、本当に美味しいよ。お兄さん、料理もできるなんてすごいな。』
高遠くんの褒め言葉に、私はそうでもないよ、と返す。
昔から帰りが遅かったお母さんを気遣ってか、家の炊事はお兄ちゃんがしてくれてた。
お母さんに少し余裕ができた今でも、ご飯を作るのがお兄ちゃんの当然の役割となっている。
「高遠くんは兄弟いるの?」
『ん?あー…口うるさい姉と騒がしい弟がね。』
「えっ、3人兄弟!?」
高遠くんはきっと1人っ子じゃないかと思っていただけに、意外な事実を目の前にして驚かずにはいられない。
想像しがたい高遠くんのお姉さんと弟くんに、一度会ってみたいなぁと思ってしまう。
「やっぱり、似てるの?」
『どうだろう。自分ではあまり分からないけど、周りからはよく似てるって言われるよ。でも、性格は全然似てないよ。』
「へぇーっ」
高遠くんの苦笑いで、最後の一口を口に入れた。
高遠くんっていつも皆から頼りにされてるし、面倒見がいいのかな。
家族のことを話す高遠くんを見ながら、高遠くんの家庭はきっと賑やかで笑いの絶えないのだろうと思った。

