「はっ、恥ずかしいって…!」

『いつの間にか雛乃ってば標準語に戻ってるしー。2人だけの時は博多弁って約束だろ?』

「う…。」


12月に交わした千尋との約束を忘れたわけじゃないの。

でも…どうしても無理だ。

恥ずかしいし、何より…、


「だって、…千尋の標準語につられるんだもん。」

『ッ――!』

「仕方ないでしょ?」


千尋が博多弁喋ってくれたら喋る、と言うと、千尋はいや、俺博多弁知らないし、と言う。


「教えてあげるよ?」

『いや、俺は…、』

「私の博多弁、聞きたくないと?」


じーっと千尋の瞳を見上げると、千尋は耳まで真っ赤にさせてうっ、と詰まらせた。

よし、形勢逆転。

このまま博多弁はナシの方向に――と思ってたのがいけなかった。


『聞きたいけん、言って?』

「っっ――!!」

『こんな感じ?』


拙い千尋の博多弁。

千尋が私に言った"クる"の意味を身をもって実感した瞬間。

真っ赤になるのが、止まらない。