『俺はね、雛乃の全部が好きなんだ。ちっこいとこも、すぐ照れるとこも、恥ずかしがり屋なとこも、泣き虫なとこも、自分を後回しにして人を優先しがちなとこも、一人で泣いちゃうとこも、何にでも頑張ろうとするとこも、雛乃が嫌いな自分も俺は好きだ。』

「…っ、」

『雛乃の不安を全て取ってあげることはできないかもしれない。けど…、こうやって抱きしめたり、涙を拭ったりすることはできるからさ…、一人で抱えんなよ。な?』


千尋くんの温かい腕が背中に回って、私の頬が千尋くんの胸に当たる。

千尋くんの匂いに包まれて、私は涙が出そうになるくらい嬉しさが込み上げてくる。

だって…、こんなにも私のことを見ててくれて、そんな風に想ってくれてるなんて…知らなかった。


「私…、千尋くんに何もしてあげれてないのに…っ」


私はいつだって千尋くんに支えてもらってばっかりで。

千尋くんの笑顔や優しい言葉や温かい手に何度心を救われてきたのか分からない。

私は千尋くんに頼ってばかりで…、千尋くんに何もしてあげられていない。

それが嫌なの。私だって千尋くんの役に立ちたい。千尋くんに頼ってもらいたい。


『そんなことない。俺だって雛乃に助けてもらってばっかりだから。』

「……っ、」

『それに、雛乃はそのままでいいんだ。ただ、俺の傍にいてくれればそれだけでいい。』

「っ、千尋くん――」


どうしよう。

嬉しすぎて言葉が出ないや。