「だっ…て、だって千尋くん…格好いいから、」
『っ』
「千尋くんは気付いてないかもしれないけど…、千尋くんってモテるんだよ…?」
随分前に、華ちゃんから聞かされたのは、私が千尋くんと付き合っていることがクラスの皆にばれた時、女子の中には泣いちゃった子がいるとかいないとか…。
学年一美人といわれる島津さんも千尋くんのことが好きだったわけだし。
私の知らないところで他の誰かに想われている千尋くんのことを不安に思わないわけないじゃない。
私はこれと言っていいところなんかないし、きっと千尋くんの隣にいる私に向けられる周りの目は冷たいんだろうなとか考えちゃうときもあるし。
ずっと千尋くんが私を好きでいてくれる自信なんて…ないの。
『――雛乃、顔あげて…?』
「っ……?」
自分に自信が持てなくてうつむいていると、私の両肩に千尋くんの手が置かれた。
恐る恐る顔をあげると、私と目が合った千尋くんは柔らかく微笑む。

