『それより雛乃…俺になんか渡すもんあるよね?』

「えっ///」


千尋くんの言葉に、心臓がドキリと口から飛び出そうになった。

ばっ、バレてる…!チョコのこと、千尋くんにバレてる…っ!

チョコのこともバレンタインの話題でさえ、千尋くんに話していないはずなのに、私がチョコを持ってきていることがモロバレしていて戸惑う。

帰り道に渡そうと思ったのにー…。


「……カバンに入ってるけど、その…っ」

『くれないの?』

「ううん!あげる…けど、」


フッと千尋くんが私から離れてくれて、その隙に千尋くんと壁からすり抜けた私は、自分のカバンが置いてある机に駆け寄る。

カバンを開けるとチョコ独特の甘い匂いがふわりと私の鼻孔を擽った。

私に着いてきて背後にいる千尋くんに、チョコを手に取った私は振り返る。


「…ねぇ、千尋くん?」

『ん?何?』


私のチョコを見て、それが欲しいと顔に書いて目をキラキラさせている千尋くんにおずおずと聞いてみる。

早くちょうだいよ、という視線が突き刺さるけど、まだこのチョコを渡すわけにはいかない。