雛乃から渡されるチョコならどんなものでも美味しく感じるんだろうなー、と思っていると、教室のドアがガラリと開いた。
「……っ、島津…。」
雛乃だと思ってドアの方に顔を向けると、そこにはあまり会いたくないと思っていた島津が立っていた。
島津の顔を見て、雛乃から言われた"これまで通り接してあげて"という言葉が脳裏にちらついた。
「…どうした?俺に用?」
『うん…。話があるの。』
俺の方に足を進める島津を見つめながら、俺は席を立った。
あまり長い話はしたくない。雛乃にいらない不安を与えてしまうと思った。
「で、何?」
雛乃に今まで通り普通に言われても、実際島津を目の前にすると普通でいられそうにない。
どうしても島津を冷たい目で見つめてしまう俺がいた。
『っ……ごめんなさい!』
「…っ」
いきなり身体を90度に曲げて頭を下げた島津に、俺は戸惑いを隠せなかった。

